- 蘭姐麗(らんじぇりー)
人生のターニングポイント・女である事を思い出した夜

2018/8/28
離婚してシングルマザーになった私は、恋愛とか再婚、そういう事には一切興味がわかず、仕事、子育て、日々の生活でいっぱいいっぱいだった。
その頃の仕事はけっこう重労働で、体のメンテナンスの為に、近所の鍼灸院に通い始めた。
いつも担当してくれる先生は、歳も近く、感じも良かった。膝の痛みに悩まされていて、
歩くたびに膝と、足の指がジンジンとひびき、体も悲鳴を上げていた。
私「痛っ・・・」
先「これで、よく歩けてたね・・・でもすぐ治してあげる」
先生は私の足に慣れた手つきでスルスルとテーピングを巻いていく。
先「ちょっと歩いてみて、違和感ないかな?」
私「痛くない!!えっ、嘘みたい・・・」
先「よく我慢してたね・・・っていうか笑った顔初めて見た」
私はハッとした。私の顔、笑ったって?!
先生に言われるなんて、普段どんな顔していたんだろう。
痛みから解放され、体が軽くなると、こんなにも世界が変わるのかと思った。
先「次いつ来られますか?」
私「今週はちょっと忙しいから・・・」
先「痛い間は毎日来てほしくて、忙しいのもわかるんだけど」
私「じゃああさって、同じ時間に・・・」
帰り際に「待ってますよ」と私の肩にポンと触れ、笑顔で治療室に戻っていった。
デートの約束みたいに話す先生、これは勘違い起こしちゃうよと参った。
職場でも家庭でも、私を”女”としてチヤホヤしてくれる相手はいないのだから、いい気になるのも当然だった。
つぎの治療の日。約束通りに先生のところへ行った。
待合室で隣にいた常連の女性が「あの先生いい男よね」と私に耳打ちした。
思わず私は赤面し、下を向いた。このご婦人、人生長いこと生きているといろいろお見通しヨ!と言わんばかりだった。私の浮ついた心が読めたのかもしれない。
先生もお仕事、私もそこは好きとかそういう感情持っちゃいけない!と言い聞かせながら
治療用ベッドに横たわる。先生の手は大きくて分厚くて柔らかくて、いい匂いがする。
「今日もだいぶ疲れているんじゃない、眠れてますか?」
「ええ、眠れてないです・・・。わかります?」
「食事も早食いしてるでしょ?」
先生は私の手首をつかんで脈を取っていた。東洋医学の治療のひとつと言っていたけど
色々お見通しなのだと。私の下心まで見えてやしないか、ヒヤヒヤした。
「貧血とか、辛くない?生理はちゃんと来てますか?」
「たしかに・・・生理は・・・いちおう来て・・・」
耳元でお代はいいからと、お腹にお灸をしてくれた。なんだか体が急にポカポカと温まり子宮の奥がキューンとなり心地良い熱さを感じていた。
気付いたらすっかり、寝落ちしてしまっていたようで、先生がトントンと腕を叩き、
起こしてくれた。私があわてて、ベッドから飛び起きようとしたら、グッと先生が
私をお姫様抱っこするように、おこした。私の大好きな手の感触、先生の匂い・・・
治療院はシーンと静かだった。私と先生ふたりきりだった。
「大丈夫?このあと予約ないから、もう少し休んで行く?」
(これって・・・誘っているのかしら、それとも・・・お商売なの?)
「先生・・・アタシ、子供のお迎えあるから帰ります・・・」
すごい色々高まりかけた駆け引きを中断し、グッと堪え治療院を後にした。

その夜、とてつもなく後悔した。ハグぐらいしても良かった。キスぐらいイケたかも・・・
もっと言えばその先だって・・・。アタシ、女に戻れるなんて思ってもいなかった。
子宮の疼く感じ、肌の火照り、こういう感覚がまた蘇るとは思っていなかった。
ふとんにくるまって、自分であちこち触って慰め、女の時間を楽しんだ。
お灸の効果も先生の施術の効果もあったと思う、この上なく濡れた夜だった。
これがのちに女性向け風俗の扉を開くきっかけとなっていきます。
人生どこで、どんな出会いや展開が待っているか本当にわかりません。
治療院の先生とはそれっきりで、時々思い出すものの昨年末
「移転しました」というおハガキが届いた。
先生からの「お変わりないですか?」の直筆メッセージ。
もし、先生に再会したらどうなることでしょう・・・。
~恋多き女☆らんじぇりー~